入院中に出会った人たちの強烈エピソード その④

今回で4回目となりますが、またまた長期入院していた時に目の当たりにした個性豊かな入院患者さん達の強烈なエピソードを書いてみようと思います。今回で最終です。今回は私の入院期間の前半に隣のベッドに入院していたSさんの話です。

 

Sさんの年令は70代半ばくらいで見た目も振る舞いも「おじいちゃん」といった感じでした。


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入院の理由は確か心筋梗塞だったと思います。私以外の入院患者さんは脳梗塞心筋梗塞のどちらかですね。

 

何でもSさんはお寿司屋さんを経営していたらしく、当時は既に引退していましたが、現役の頃はとても繁盛していたようで資産もかなり持っているらしかったです。同室の他の患者さん(その②で書いたAさんです)から聞いた話です。

 

そんなSさんには、ほぼ毎日のように夕方にお見舞いに来る娘さんがいました。

その娘さんの年令は50才くらいでしょうか。必ず病院の夕食とタイミングが重なる遅い目の夕方に仕事を終えてやって来るのですが、カーテンを閉めきってSさんと話をしていましたので、ほとんど顔を見たことはありませんでした。

でも、カーテン一枚しか隔てているものがありませんでしたので会話は丸聞こえでした。

娘さんは夕食を食べているSさんに向かってその日1日の出来事を報告するのですが、そのほとんどが職場の愚痴でした。優しいSさんはウンウンと聞いているだけでしたが、よく毎日こんな愚痴だけの話に付き合えるなぁと私は感心していました。

 

他に話している内容としては、Sさんは退院が迫っていた(疾患の種類によって入院出来る最大日数には決まりがあります)のですが、娘さんがSさんの移り先の高齢者施設を探していたらしく、家電品の手配がこうだああだとSさんに対してどこか偉そうに話していました。それに対してもSさんはウンウンと聞いているだけでした。

 

毎日のように夕食時にやってきては大きめな声で話す娘さんのことを何となくのイメージでアパホテルのあの女社長に重ねた私は心の中で『アパ』と呼ぶようになっていました。なのでこれ以下は娘さんのことをアパと書きます。ちなみにこの時点でも顔はほとんど見ていませんでした。

 

ここまでは、娘にデレデレのお父さんのよくある感じの親子だなと思っていたのですが、ある時衝撃が走りました。

 

高齢者施設への引っ越し手続きを一手に引き受けているアパの姿に感心した同室のAさんが、『しっかりした娘さんやな~。色々任せといたら安心やな~。』とSさんに話掛けたところ、『あれ、ホンマの娘とちゃうねん。。』と言い出しました。カーテン越しに会話を聞いていた私も思わず『えっ?!』と声を出しそうになりました。

そして、さらにSさんは『あれ、昔、俺の女やってん。』と続けて言いました。

『マジ???』とこれまた声を出しそうになりましたが、これもこらえて続きを聞いていると、『昔は俺の女やってんけど、養子にしてん。』と言い放ちました。私の頭の中は『?????』状態です。

何がどうなったらその最終形態に落ち着くのか?税金対策か何かなのか、、

 

とにかく冗談とかのトーンではないSさんの様子にAさんも『へぇ~、、』と言って言葉が詰まっていました。

 

何か理由があるにせよ、「グラップラー刃牙」に出てくる「愚地独歩」に似ているSさんがますます妖怪ジジイに思えてきた瞬間でした。

 

やがて、引っ越し先の施設が決まったSさんは退院して出ていきましたが、その入れ替わりに入ってきたおっちゃんはものすごく普通の人に感じました。

 

今頃Sさんとアパはどうしているのかな?本当の親子以上の関係なのかもしれません。