入院中に出会った人たちの強烈エピソード その①

長期入院していた時に目の当たりにした個性豊かな入院患者さん達の強烈なエピソードを何回かにわたって書いてみようと思います。

 

普段の生活では絶対に出会うことのない人間模様でしたので是非ともお読み頂ければ嬉しいです。

 


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まず一人目は、料理店を営んでいた(今でも営業している?)Tさんのお話です。

Tさんは脳梗塞を発症して入院していました。確か年齢は65~70才くらいだったと思います。

何と約半年間も意識不明で寝たきりになっていたそうですが、ある時突然意識を取り戻して目を覚ましたそうです。

ドラマか小説のような話で、これだけでも『マジ!?』と思いましたが、本当の話です。

 

でも、そんな奇跡の生還を果たした感じは全くなくて、ごく普通の気のいいおっちゃんという感じの人でした。

私がリハビリ病院に転院したその当日から退院する日まで同じ4人部屋の向かい側のベッドに入院していたTさんは気さくな人柄で、人見知りの私の不安を一掃するかの如く最初からガンガン話し掛けてきてくれてとてもありがたい存在でした。

 

でも一つ難点があって、それは脳梗塞の後遺症として記憶障害を患っていたのです。

 

脳梗塞をおこす前の約半年間の記憶だけがスッポリとほとんど無いらしくて、その間に実の母親を亡くしたそうなのですが、お葬式の記憶から何から何までその期間のことは覚えていないとのことでした。

周りの家族に後から聞かされたそうですが、最期を看取ってあげることが出来なかったらしくて少し寂しそうに、でも明るく『母親が死んだことも知らんかった。』と何度も同じ話を聞かせてくれました。

 

不思議なことに記憶が無いのはこの半年間だけで、その前のことはわりと覚えているとのことでした。

 

でも、自覚症状が無いだけで短期的な記憶もすぐに失くしていて、ほとんど毎晩睡眠薬を出してもらって眠りについていたのですが、薬を飲んだ記憶は翌朝には失くしていました。

晩御飯を6時半過ぎに食べ終えた後、大体決まって2時間くらい凄いイビキをかいて眠ってしまい、そのせいでか9時の消灯時間にすぐには眠ることが出来ず、9時半頃に看護師さんをナースコールで呼んで睡眠薬を出してもらっていました。

そして翌朝、Tさんは隣のベッドの早起き仲間のAさんに『昨日は睡眠薬飲まずによう寝れた!』と清々しく話しかけているのです。

最初はAさんも『飲んどったで。』と返していましたが、毎日のように同じやり取りが繰り返されるうちに、しまいには『そうやな、、』としか返さなくなってしまいました。Aさんにとっては、Tさんが睡眠薬を飲んだかどうかなんて大きなことではないですし、『睡眠薬を飲まずに寝れた!』と嬉しそうに話すTさんの言葉をさえぎることに何となく心苦しさを感じるようになったのではないでしょうか。

私もカーテン越しに聞こえてくるこの会話に、『そうやな。』でいいのに、、と思って聞いていました。

 

ここで思うのは、晩御飯を食べた後に寝なければ消灯時間に普通に寝れるのでは?という疑問で、消灯前にグーグー寝て消灯後に『寝れん!』って当たり前やん!って心の中で突っ込んでいました。

でも、晩御飯を食べた後に特にやることもないTさんにはその時間は寝ることしか選択肢がなかったのではないでしょうか。医者や看護師さんも、睡眠時間が少なくなるとか寝れないことがストレスになる方が問題だから、と言って遠慮せずに寝れない時は呼んで下さい。と話していたので、Tさんも遠慮なくほとんど毎日睡眠薬を飲んでいました。睡眠薬の習慣性と常習性はちょっと怖いなと思いました。

 

怖い話で言うと、睡眠薬を飲んだTさんは本格的に眠くなる前にトイレにいくことが多かったのですが、その帰りに私のベッドをカーテン越しに(4人部屋とはいえ、プライバシーを保つためにそれぞれのベッドは薄いカーテンに囲まれている)無言で覗いてくるのです。最初にそれに気付いた時は本当に怖くて声を上げそうになりました。

昼間の陽気な感じのTさんとは全く別人のような雰囲気で、意識もちゃんとしてるのかさえも疑わしい様子でこちらを覗いてくるのです。おそらくあまり物音も立てずにスマホを見るか読書していた私がベッドにいるのかどうか確認していただけだと思うのですが、夢遊病のような感じで覗いてこられるのは恐怖以外のなにものでもありませんでした。入院して寝てるときなんて本当に無防備でいつ暴漢に襲われてもおかしくないと思いました。カーテンに覆われているだけで誰でも入って来れますので、、

 

話は変わるのですが、Tさんには30才位の娘さんがいて、ほとんど毎日見舞いに来ていました。

ちょっと人見知りっぽい感じの娘さんは、Tさんが家族で経営している飲食店のランチのお手伝いを終えた15時頃にお見舞いに来て、他愛もない話をひとしきり終えて17時頃に帰っていきました。ほとんど毎日欠かさずにやって来る娘さんを見て、Tさんが大好きなのだと思いました。それにしても意識のなかった半年間はどんな想いで過ごしていたのでしょうか。ちょっと想像もつかないですね。

 

予定では私の退院の1ヶ月後に退院しているはずですが、今頃は元気にしているのでしょうか?

元気にフライパンを握って料理を作っていてくれれば嬉しいなと思います。

 

お店の場所とかは大体聞いていましたので一度行ってみようかな。とも思いましたが、やめておきます。数年前のことなのでおそらく私の顔など覚えていないことでしょう。

いや、3日後でも怪しいか、、